表紙  前文  程順則  程摶萬  蔡温  蔡鐸  曽益  周新命  蔡文溥  蔡肇功



程摶萬(ていせんばん)

 

 春日登山(十一歳作)

春山一望景無窮

海色蒼蒼万里空

飛鳥数声雲幾点

何時収入画図中

 

 春の日に山に登る

春の山から一望すると景(けしき)は窮まることが無い

海の色は蒼蒼(あおあお)として万里かなたまで空(そら)

飛ぶ鳥は声を数え雲は幾つかの点(てん)

何時(いつ)か画図(えず)の中に収め入れよう

 

 歩月(十二歳作)

中庭満樹白璘璘

万里清光絶点塵

尋句踏残三径後

夜深欲問広寒人

 

 月と歩む

中庭(なかにわ)は樹(き)が満ち白(つきのひかり)が璘璘(かがや)

万里の清い光は点(けがれ)や塵(ちり)を絶つ

句を尋ねて踏み残す三つの径(こみち)の後(あと)

夜は深く問うことを欲(のぞ)む広寒(つきのみやこ)の人に

 

 詠竹(十三歳作)

庭前百尺竿

九十夏生寒

高節圧花径

清姿護玉闌

月来生个个

風過動珊珊

群木凋霜落

虚心独自安

 

 竹を詠(うた)う

庭の前の百尺の竿(たけ)

九十(きゅうじゅうにち)の夏に寒(すずし)さを生む

高い節(いさぎよさ)が花の径(こみち)を圧(おお)

清い姿は玉の闌(もん)を護る

月が来(のぼ)ると个(ひとつ)个(ひとつ)生まれる

風が過ぎると珊珊(さんさん)と動く

群れた木凋(しぼ)み霜落ちても

虚(むな)しい心は独り自ら安んじる

 

 詠蘭(十四歳)

紫茎緑葉満庭幽

独秀園中一片秋

空谷無人明月夜

幽香不散客滞留

 

 蘭を詠(うた)う

紫の茎と緑の葉が庭に満ちて幽(おくゆか)しい

独り園の中に秀(ひい)でて一片(ひとひら)の秋

空(さび)しい谷(ところ)で人は無く明るい月の夜

幽(おくゆか)しい香りは散らず客は滞(とどこお)り留(と)まる